不法行為テキスト

 宅建士合格広場教材

一般的不法行為

責任能力のある人が、故意又は過失により、他人の権利や法律上保護される利益を侵害する行為(違法性がある行為)により、他人に損害が生じた場合、責任能力のある人が損害賠償の責任を負うことになります。この行為を一般的不法行為といいます。

 一般的不法行為の成立要件

  • 加害者に責任能力がなければ、不法行為は成立しません。責任能力とは、自分の行為が、違法であり、法律上、何かしらの責任が生じることを理解できる能力のことです。

【補足】

  1. 未成年者が、他人に損害を加えたが、自分の行為の責任を弁識するに足りる知識を備えていなかった場合、その未成年者は、責任無能力者となり、損害賠償の責任を負いません。未成年者だからといって、常に、責任無能力者とはなりません。一般的に12歳位の未成年者が、責任能力があるといわれています。しかし、必ずしも、年齢のみで判断するのではありません。
  2. 精神上の障害により、自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に、他人に損害を加えた者は、責任無能力者となり、損害賠償の責任を負いません。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、損害賠償の責任を免れないことになります。
  3. 責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、原則として、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負います。
    ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときには、損害を賠償する責任を負いません。

  • 原則、加害者に故意又は過失がなければ、不法行為は成立しません。例えば、不可抗力などの場合には、不法行為は成立しません。

【補足】

  1. 故意とは、加害者が、他人に損害が加わるだろうと認識しながら行為をすることです。

  2. 過失とは、加害者が、他人に損害を与えることを注意していれば分かるのに、注意をせずに行為をしてしまうことです。

  3. 加害者に故意又は過失があるかどうかは、原則、被害者が、立証する必要があります。

  • 他人の権利や法律上保護される利益を侵害する行為を行っても、その行為に違法性がない場合には、不法行為は成立しません。例えば、違法性がないものとして、正当防衛や緊急避難などがあります。

【補足】

  1. 正当防衛とは、自己又は第三者の権利や法律上保護される利益を防衛するために、やむを得ず加害行為をすることです。

  2. 緊急避難とは、他人の物から生じた急迫の危難を避けるために、その物を損傷することです。

  • 加害者の故意又は過失に基づく、権利や利益を侵害する行為があっても、被害者側に損害が発生しなかった場合には、不法行為は成立しません。

【補足】

  1. 損害とは、財産的な損害のみでなく、精神的な損害も含まれます。なお、精神的な損害の賠償のことを慰謝料といいます。

  2. 法人の名誉権が侵害され、金銭評価が可能な無形の損害が生じた場合、法人は、加害者に対して、不法行為による損害賠償の請求をすることができます。

  • 加害者の故意又は過失に基づく、権利や利益を侵害する行為と被害者側の損害との間に因果関係がなければ不法行為は成立しません。

特殊不法行為

特殊不法行為とは、不法行為をした者以外の者に対しても、不法行為責任を負わせようとするものです。

使用者責任

ある事業を行うために他人を使用している使用者又は使用者に代わりその事業を監督する者は、その被用者(従業員)がその事業の執行につき、第三者に対し、被用者自身が一般不法行為の成立要件を満たす行為を行った場合、損害賠償の責任を負うことになります。

ただし、使用者が、被用者の選任、監督について相当の注意をした場合や相当の注意をしていたとしても損害が発生したことを使用者が証明することができた場合には、使用者は、責任を負う必要はありません。

このように、不法行為を行った被用者以外の使用者等が損害賠償の責任を負うことを使用者責任といいます。

また、使用者等が損害賠償の責任を負うことになりますが、一般的不法行為をした被用者も、損害賠償の責任を免れるのではなく、責任を負っていくことになります。

【補足】

  1. 例えば、会社の従業員が、仕事中に車を運転していて、第三者に怪我をさせた場合、使用者も責任を負っていくことを使用者責任といいます。

  2. 事業の執行に該当するかどうかは、被用者の職務執行行為に限定されておらず、被用者の行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものと認められる場合も、事業の執行に含まれます。

  3. 使用者責任が成立し、使用者にも責任を負う必要が生じた場合においても、被用者は、責任を免れるわけではありません

  4. 使用者が、被害者側に損害賠償をした場合、使用者は、被用者に対して、その事業の性格、規模、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様等その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において求償することができます。

  5. 使用者責任が成立した場合、被害者は、使用者と被用者の双方に損害賠償の全額を請求することができます。使用者か被用者の一方が、被害者に、弁済、代物弁済等をした場合には、その効力は、もう一方の者に影響を及ぼすことになります。ただし、それ以外の事由(履行の請求、時効の完成など)の効力については、もう一方の者に影響を及ぼしません。これを不真正連帯債務といいます。

  6. 被用者が行った不法行為の相手方が、その被用者が職務権限なくその行為を行っていることについて、知っていた場合又は重過失によって知らなかった場合には、被用者の不法行為による損害は事業の執行について加えた損害とはいえず、使用者は、使用者責任を負うことはありません。

注文者の責任

請負人が行った不法行為について、注文者は、原則、責任を負うことはありません。ただし、注文者の注文や指図に過失があることにより、請負人が、不法行為をしてしまった場合には、注文者は、責任を負うことになります。

【補足】

例えば、請負人が建物を建築している際に、仕事上のミスで第三者に怪我をさせてしまった場合、原則、注文者が建物を建築しているのではないので、注文者は、責任を負いません。ただし、請負人の仕事上のミスが、注文者の過失ある注文や指図により発生した場合には、注文者は、責任を負うことになります。

土地工作物の責任

土地の工作物(建物など)の設置又は保存に瑕疵があることにより、他人に損害を加えた場合、最初に、その工作物の占有者が、損害賠償責任を負うことになります。

ただし、占有者が、損害の発生を防止するために必要な注意をしていたことを証明した場合には、占有者は、責任を負うことはありません。

占有者が、責任を負う必要がなくなった場合、その工作物の所有者(現在の所有者)が、損害賠償責任を負うことになります。

なお、所有者は、損害の発生を防止するために必要な注意をしていたとしても、責任を免れることはできません。

【補足】

  1. 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を加えた場合、最初に責任を問われるのが、過失のある占有者になります。占有者に過失がないことを証明することができた場合には、次に、所有者が責任を問われることになります。この場合の所有者は、無過失責任となります。簡単に言うと、占有者が無過失の場合、所有者は、必ず、責任を負うことになるということです。
  2. 占有者又は所有者が、被害者に損害賠償をしたが、損害の原因について他に責任を負うべき者がいる場合、占有者又は所有者は、その者に対して求償することができます。

【例題】

AはBとの請負契約により建物を建築させ、その建物の所有者となった。その後、Aは、その建物をCに賃貸し、占有していた。その後、その建物の外壁の一部が剥離して、Dが怪我をした。この場合の、土地工作物の責任について、見ていきます。

【解答・考え方】

  1. 占有者であるCが、損害発生の防止のために必要な注意をしていた場合、Cは、Dに対して責任を負いません。Cが、損害発生の防止のために必要な注意をしていなかった場合、Cは、Dに対して責任を負うことになります。
  2. Cが、損害発生の防止のために必要な注意をしていた場合、所有者であるAは、Dに対して責任を負うことになります。この場合、Aは、無過失責任となります。
  3. A又はCが、Dに対して損害賠償をした。しかし、建物の外壁の一部が剥離した理由が、壁の施行業者であるEに責任があった場合、損害賠償をしたA又はCは、Eに対して求償することができます。

責任無能力者の監督義務者の責任

責任能力のない者は、不法行為責任を負うことはありません。例えば、6歳の未成年者が、自転車に乗っていて、不注意で、第三者に怪我をさせた場合でも、6歳の子供に責任を負わせることができません。

そこで、責任能力のない者の監督義務者(親など)や監督義務者に代わって責任能力のない者を監督する者は、責任能力のない者が第三者に加えた損害の責任を負うことになります。

ただし、監督義務者等が、監督義務を行うことを怠っていなかったことや監督義務を怠らなくても損害が発生したことを証明した場合、監督義務者等は、責任を免れることができます。

 

共同不法行為

2人以上の者が、共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯して、被害者に対して、共同の不法行為による損害全額を賠償する責任を負うことになります。

また、共同で不法行為をした者の内、どちらがその損害を加えたかを知ることができないときも、各自が連帯して、被害者に対して、共同の不法行為による損害を賠償する責任を負うことになります。

共同不法行為が成立した場合、2人以上の1人の加害者が、被害者に損害賠償をした場合、その損害賠償をした1人以外の他の加害者は、被害者に対して、損害賠償の責任を免れることになります。

【補足】

  1. 例えば、Aが自動車を運転していて、Bが運転している自動車と衝突し、Cが怪我を負った場合、AとBの双方が一般不法行為の成立要件を満たしているときには、Cは、AとBの双方に損害賠償の全額を請求することができます。これを共同不法行為の責任といいます。

  2. 数人の加害者の1人が、被害者に、弁済、代物弁済等をした場合には、その効力は、他の加害者に影響を及ぼすことになります。ただし、それ以外の事由(履行の請求、時効の完成など)の効力については、他の加害者に影響を及ぼしません。これを不真正連帯債務といいます。なお、使用者責任の場合も同様となります。

不法行為の効果

損害賠償について

損害賠償は、原則、金銭賠償になります。ただし、例外的に、他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命じることができます(例えば、名誉を毀損したことを、謝罪するために広告に掲載することなど)。

なお、加害者は、不法行為時から損害賠償請求の責任を負うので、その時から履行遅滞の責任を負うことになります。つまり、不法行為時を起算日として遅延利息(年5分の法定利率)が発生します。

 

損害賠償の請求をすることができる者

不法行為が成立した場合、被害者は、財産的損害や精神的損害について、加害者に対しての損害賠償請求権(精神的損害の場合の慰謝料請求権も含む)を有することになります。

加害者の不法行為により、被害者が死亡した場合、被害者の相続人は、放棄等をしない限り、被害者が生きていたならば、行使することができる損害賠償請求権を行使することができます。

なお、精神的苦痛がある被害者の父母、配偶者、子供その他一定の者は、被害者が有する損害賠償請求権を相続するのではなく、自己の権利として慰謝料請求権を有することになります。

また、被害者が死亡しなかったが、それに近いような重大な怪我があった場合においても、精神的苦痛がある被害者の父母、配偶者、子供は、自己の権利として慰謝料請求権を有することになります。

 

過失相殺

不法行為は成立したが、被害者側にも不注意や落ち度がある場合、被害者側の不注意や落ち度を考慮して、損害賠償請求金額を減額することができる制度があります。これを過失相殺といいます。

債務不履行の場合の過失相殺は、「義務」でしたが、不法行為の場合の過失相殺は、「できる」となっているので、裁判所は、自由に過失相殺するかを決めていきます。

 

損害賠償請求権の消滅時効

被害者又はその法定代理人が、損害又は加害者を知った時から3年、あるいは、不法行為時から20年を経過することにより、不法行為による損害賠償請求権が消滅することになります。なお、一定の例外はあります。

 

テキストを読み終えた後は、穴埋め問題を解きましょう。

また、穴埋め問題を解き終えた後は、一問一答を解きましょう。

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