共有とは、ある1つの物を2人以上の者が共同で所有することです。例えば、甲建物をAとBが共同で購入した場合、その建物をAとBが2人で共有することになります。
目次一覧
共有物の使用
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
【例題】 AとBが共同で建物を購入した。Aの持分が3分の2で、Bの持分が3分の1です。この場合、Aは、その建物の3分の2、Bは、3分の1しか使えないのか。 【解答】 AもBも持分に応じた部分について使用できるのではなく、建物の全部を使用することができます。持分に応じた使用とは、例えば、Aが3日に2回、Bが3日に1回使用する等のことです。なお、共有者の1人の者に常に共有物を使用させたりすること等は、協議で定めることができます。 |
【補足】
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共有持分
共有の場合、各共有者は、共有物について持分(=共有物を所有できる割合)を有しています。
持分の推定
持分は、共有者同士で決めていきますが、決めていない場合等には、各共有者は、均等な持分であると推定されることになっています。例えば、AとBが甲建物を共有しているが持分を決めていなかった場合、Aの持分が2分の1、Bの持分が2分の1となります。
持分の譲渡等
持分は、各共有者が単独で自由に使える権利です。したがって、自分の持分を、他の共有者の承諾がなくても、第三者に譲渡したり、抵当権を設定することができます。
持分の放棄等
- 共有者の1人が、自分の持分を放棄したときは、その持分は、他の共有者のものになります。
- 共有者の1人が死亡した場合は、その者の持分は相続人のものになります。相続人がいない場合には、特別縁故者のものになります。特別縁故者がいない場合には、他の共有者のものになります。
【補足】 特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」のことです。 |
共有物の変更等
共有物の保存行為
各共有者は、単独で、共有物の保存行為をすることができます。
【補足】
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【例題】 AとBが共同で建物を購入し、共有(=持分割合は、各2分の1ずつ)している。しかし、その建物がCによって不法に占有されていた場合、Aは、Bの同意を得ることなく、Cに対してその建物の明渡し請求をすることができるのか。 【解答】 不法占拠者に対する明渡し請求は、保存行為に該当することになるので、Aは、Bの同意を得ることなく、Cに対し明渡し請求をすることができます。なお、AがCに対して、不法占拠に対する損害賠償を請求する場合、Aは、自分の持分についてのみを請求することができます。 |
共有物の変更行為
各共有者は、他の共有者全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができません。
【補足】 共有物に変更を加えるとは、共有物の性質や形状の変更等のことであり、例えば、共有物の譲渡、共有物に抵当権を設定、共有物の増改築等のことです。 |
共有物の管理行為
各共有者は、管理行為をするには、持分の価格の過半数(=共有者の人数ではありません)で決めていきます。
【補足】
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共有物に関する負担等
- 各共有者は、持分に応じて共有物の管理費用を負担することになります。管理費用を支払わなければならない共有者の1人が、1年以内に管理費用を支払わない場合、他の共有者は、相当の償金を支払って管理費用を支払わなかった共有者の持分を取得することができます。
【補足】 管理費用とは、例えば、共有物の修繕、固定資産税等の費用のことです。 |
【例題】 AとBが共同で建物を購入し、共有していたが、建物の壁が剥がれていたので、Aは、業者に修理を依頼し、修理代金50万円を支払った。AとBの持分がそれぞれ2分の1の場合、Bは、自分の持分相当の25万円を支払う必要性があるのか。 【解答・手順】
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- 共有者の1人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、包括承継人だけでなく、他の共有者の特定承継人に対しても行使することができる。
【補足】
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【例題】 AとBが共同で建物を購入し、共有(=持分割合は各2分の1ずつ)していたが、建物の壁が剥がれていたので、Aは、業者に修理を依頼し、修理代金50万円を支払った。その後、Bは、25万円を支払うことなく、自分の持分をCに譲渡した場合、Aは、25万円の請求をCに対してできるのか。 【解答】 Aは、Bに対して、25万円を請求できる権利があります。この権利は、Bの特定承継人であるCに対しても行使できます。すなわち、Aは、Cに対して、25万円の請求ができます。 |
共有物の分割
共有物の分割請求
- 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます。
【補足】 共有物の分割とは、簡単に言うと共有関係をやめるということです。 |
- 各共有者は、5年以内なら分割を禁止する特約を定めることができます。また、その特約は、更新することができ、更新する場合においても、5年以内でなければなりません。なお、一定の共有物については 、この規定は適用されません。
【補足】 分割を禁止する特約とは、簡単に言うと共有関係を続けるということです。 |
- 共有物の不分割特約は、登記をしておかないと、共有者の特定承継人に対抗することができません。
【補足】 共有者間で、分割しないことを合意していても、合意している旨の登記をしておかないと、共有者の特定承継人に対しては、分割しないことを合意している旨を主張することができないということです。 |
裁判による共有物の分割
共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができます。
【補足】
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分割における共有者の担保責任
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保責任を負います。
【例題】 AとBが共同で土地を購入し、共有(=持分割合は各2分の1ずつ)している。その後、A・B間で協議により分割をして、その土地の一部分の甲地をAが、その土地の一部分の乙地をBが取得した。乙地に隠れた瑕疵(全く気づきようのない欠陥)があった場合、Bは、どうすることもできないのか。 【解答】 Bは、Aに対して損害賠償の請求や分割協議の解除(=もう1回、分割協議をすること)をすることができます。なお、裁判による分割の場合、解除はできません。(=分割をもう1回してくれとはいえません) |
分割参加
共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができます。例えば、共有者の1人の持分に抵当権を設定した場合の抵当権者等は、分割に参加することができます。
テキストを読み終えた後は、穴埋め問題を解きましょう。
また、穴埋め問題を解き終えた後は、一問一答を解きましょう。