出題頻度は高くはないのですが、最近の宅建士試験の傾向を考えますと、出題される可能性がありますので、説明していきます。
即時取得とは
民法192条において、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」と規定されています。
この規定が、即時取得についての規定です。
例えば、Aが、Bから動産を購入したところ、実は、その動産の真の所有者がCであった場合、その動産は、AとCのどちらのものになるかについて規定されています。
そして、Aが、その動産の所有者がBであると過失なく信じていた(善意無過失)ときには、Aは、その動産を取得することになります。
簡単に言いますと、真の所有者よりも、善意無過失の第三者が保護される規定です。
【補足】
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要件
即時取得の要件は、次の5つです。この5つの要件全てを満たさない限り、適用されません。
- 動産であること
不動産はこの規定の対象となっていません。 - 取引行為によって占有を取得していること
例えば、売買によって取得しただけではなく、贈与や強制競売による競落も含みます。
なお、相続により取得した場合には、即時取得することができません。
また、制限行為能力者や無権代理人から、直接取得した場合にも即時取得することができません。 - 前主が無権限者・無権利者であること
- 平穏、公然、善意無過失であること
占有所得時で判断します。
法人の善意・無過失は、その法人の代表者について決することになりますが、代理人が取引行為をしたときは、その代理人について決すべきであるとなっています。 - 占有を取得すること
過去問を紹介
次の過去問題にチャレンジしてください。教材購入者様の皆様は、本試験までに、こちらに掲載しています即時取得対策問題も解いてください。
【問題1】
法人について即時取得の成否が問題となる場合、当該法人の代表機関が代理人によって取引を行ったのであれば、即時取得の要件である善意・無過失の有無は、当該代理人を基準にして判断される。
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【解答1】
この問題は、平成24年宅建士試験問2肢2の問題です。
この問題は、判例そのままの問題です。
判例において、「法人の善意・無過失は、その法人の代表者について決するが、代理人が取引行為をしたときは、その代理人について決すべきである。」となっています。
本問では、「代理人によって取引を行った」旨の記述がなされていますので、本問の記述通り、代理人を基準にして判断されることになります。
A.正しい記述
【問題2】
売買契約に基づいて土地の引渡しを受け、平穏に、かつ、公然と当該土地の占有を始めた買主は、当該土地が売主の所有物でなくても、売主が無権利者であることにつき善意で無過失であれば、即時に当該不動産の所有権を取得する。
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【解答2】
民法192条において、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」と規定さています。
すなわち、即時取得は、動産について適用され、不動産について適用されないので、本問は、誤った記述となります。
A.誤った記述