法定追認について~民法をわかりやすく解説

    

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今回は、「法定追認(民法125条)」を見ていきます。

法定追認

【民法125条:法定追認】

追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

  1. 全部又は一部の履行
  2. 履行の請求
  3. 更改
  4. 担保の供与
  5. 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
  6. 強制執行

追認は、取り消すことができる行為の相手方に対する意思表示によってします。

ただ、この追認の意思表示がなかっても、

ある一定の時期(追認をすることができる時以後)に、ある行為を行う場合(ある一定の事実がある場合)に、追認(契約を取り消さないこと)をしたものとみなされます。

これが、法定追認です。

ざっくりと見ていきます。

未成年者Aが、法定代理人Bの同意を得ることなく、自己所有の土地をCに売却しました。

未成年者Aの行為は、取り消すことができます。

追認のところでも見てきましたが、

取り消すことができる行為については、一応有効で、

取り消すこともできれば、

追認することもできます。

追認すれば、有効なものとなります(一応有効→確定有効!)。

なお、追認すれば、それ以後、取り消すことができなくなります。

※追認した後に、やっぱり取り消します!と言うのは、相手方を馬鹿にしていますよね。ですので、追認すれば、それ以後、取り消すことができなくなります。

追認がない場合であっても、

「明かに追認したよね!という一定の事実があれば、追認があったものとみなされます。

これが法定追認です。

例えば、法定代理人Bが、Cに対する土地の登記の移転に協力したとします。

Bは、登記の移転に協力しています。

それにもかかわらず、やっぱり、「取り消します!」という主張が認められれば、

Cからすれば、「取り消すんだったら、登記の移転に協力するな!」となりますよね。

そこで、

追認したものとみなされます。(法定追認)

つまり、

土地は、Cのものとなります。

上記の具体例では、法定代理人Bが、土地の登記の移転に協力しました。

これに対し、

未成年者であるA自身が土地の登記の移転に協力したとします。

この場合、追認したものとみなされません。(法定追認適用なし)

そもそも、

制限行為能力者(この具体例では未成年者)は、追認することができず、行為能力者になった後(この具体例では、成年に達した後)等であれば、追認することができます。

これは、

法定追認についても同じで、

行為能力者になった後(この具体例では、成年に達した後)等に、

Aが土地の登記の移転に協力した!ということであれば、追認したものとみなされます。

もう少し、詳しく見ていきます。

未成年者Aが、自分の土地をBに売却する契約を締結したとします。

例えば、Aの法定代理人が、土地の登記をBに移転することに協力したとします。

この場合、上記条文1.の「全部又は一部の履行」に該当することになります。ですので、追認したものとみなされます。

※なお、異議をとどめない!ものと考えてください。(以下同じ。)

※「全部又は一部の履行」については、自ら履行するだけでなく、相手方からの履行を受領する場合も含みます。

例えば、Aの法定代理人ではなく、A自身が協力した場合には、追認したものとみなされません。

その理由は?

上記条文を見て頂きますと、

追認をすることができる時以後と記載していますが、

Aは、成年に達していませんので、「追認をすることができる時以後」ではありません。

例えば、Aの法定代理人が、Bに「土地の代金を支払ってくれ!」と請求したとします。

この場合、

上記条文2.の「履行の請求」に該当することになります。

ですので、追認したものとみなされます。

※「履行の請求」については、「全部又は一部の履行」と異なり、自ら請求する場合だけです。

例えば、Aの法定代理人が、売買代金債権を第三者に譲渡したとします。

この場合、

上記条文5.の「取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡」に該当することになります。

ですので、追認したものとみなされます。

詐欺の場合を見ていきます。

Aは、Bに騙されて、自己所有の甲土地をBに売却しました。

Aは、Bへの売却がBの詐欺によることに気付きました。

詐欺によることに気付いた!これが、追認をすることができる時!ということになります。

例えば、

Aは、Bへの売却がBの詐欺によることに気付いた後、甲土地の売買代金債権をCに譲渡したとします。

この場合、追認したものとみなされます。

追認後は、取り消すことができませんので、

Aは、Bの詐欺を理由に、Bとの間の甲土地の売買契約を取り消すことができません。

※詐欺の話は、意思表示のところで詳しく説明します。

問題にチャレンジ

次の記述は、民法の規定及び判例によれば、正しいですか?それとも、誤っていますか?

未成年者Aが、A所有の不動産をAの唯一の親権者Bの同意を得ることなく成年者Cに売却する契約(本件契約という。)を締結した。Aが成年に達する前に本件契約の代金債権を第三者に譲渡した場合には、本件契約及び代金債権の譲渡につきBの同意がなく、かつ、追認がなかったときでも、Aは、本件契約を取り消すことができない。

解答:誤り

本問は、「Aが本件契約の代金債権を第三者に譲渡した」となっており、法定追認事由の「取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡」に該当します。

ただ、「Aが成年に達する前に譲渡した」となっており、「追認をすることができる時以後」ではありません。また、法定代理人Bの同意がありませんので、追認があったものとみなされません。

さらに、追認があれば、それ以後、取り消すことができなくなりますが、「追認がなかった」となっています。

上記の結果、取り消すことができます。

なお、A自身(制限行為能力者自身)も取り消すことができます。

問題にチャレンジ

次の記述は、民法の規定及び判例によれば、正しいですか?それとも、誤っていますか?

AはBの詐欺により、Bとの間でA所有の甲土地を売り渡す契約を締結した。Aは、その詐欺の事実に気付いた後に、売買代金の支払請求をした場合であっても、その際に異議を留めていれば、なお、売買契約の意思表示を取り消すことができる。

解答:正しい

異議を留めていれば、売買契約の意思表示を取り消すことができます。

※異議を留めるとは、「追認をする意思はない」という旨を伝えることです。(参考程度で十分です。)

問題にチャレンジ

次の記述は、民法の規定及び判例によれば、正しいですか?それとも、誤っていますか?

取り消すことができる行為について追認をすることができる取消権者が当該行為から生じた債務の債務者として履行をした場合には、法定追認の効力が生ずるが、当該行為について当該取消権者が債権者として履行を受けた場合には、法定追認の効力は生じない。

解答:誤り

自ら履行をした場合だけでなく、履行を受けた場合においても、法定追認の効力が生じることになります。

問題にチャレンジ

次の記述は、民法の規定及び判例によれば、正しいですか?それとも、誤っていますか?

未成年者Aが法定代理人Bの同意を得ないで単独で自己所有の土地をCに売却する売買契約を締結したが成年に達する前に、Cに対し異議をとどめずに当該売買契約に基づき所有権移転登記をした場合、Aは、未成年者であることを理由に、当該売買契約を取り消すことができない。

解答:誤り

民法125条において、「追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について「全部又は一部の履行」などの事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。」と規定されています。

これを法定追認といい、

法定追認がなされたのであれば、取り消すことができなくなります。

本問は、「異議をとどめずに当該売買契約に基づき所有権移転登記をした」と記載されており、上記の「全部又は一部の履行」に該当するが、「成年に達する前に」と記載されており、「追認をすることができる時(成年に達した時)」がまだ到来していません。

つまり、民法125条の規定が適用されず、Aは、売買契約を取り消すことができます。

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