詐欺による取消しと第三者の関係~民法をわかりやすく解説

    

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今回は、「詐欺による取消しと第三者の関係(民法96条3項)」を見ていきます。

詐欺による取消しと第三者の関係

【民法96条3項:詐欺による取消しと第三者の関係】

詐欺による取消しは、取消し前に現れた善意無過失の第三者に対抗することができない。

例えば、Aは、Bの詐欺により、A所有の甲土地をBに売却しました。

その後、Bが甲土地をCに転売した。

その後、Aは、詐欺を理由に、Bに対する土地の売却を取り消しました。

この場合、甲土地は、Aのものになるか?Cのものになるか?

ここが、問題となります。

第三者Cが、取消し前に登場したのか?取消し後に登場したのか?

これによって、適用される規定が異なります。

  1. 第三者Cが、取消し前に登場した場合には、民法96条3項の規定が適用されます。
    つまり、CがA・B間の詐欺の事実について善意無過失の場合(Cが、詐欺のことを知らない、かつ、知らないことについて過失がないこと)には、その取消しは、Cに対抗することができません。(=甲土地は、Aのものではなく、Cのものです。)
  2. 第三者Cが、取消し後に登場した場合には、先に登記(対抗要件)を備えた方が、甲土地は自分のものだ!と主張することができます。

※上記の事例では、第三者Cが、取消し前に登場していますので、上記1の話となります。

上記1の話(民法96条3項の話)を細かく見ていきます。

そもそも、

Aが、Bに対する土地の売却を取り消していますので、A・B間の売買契約は、最初からなかったことになります。

つまり、Bは、甲土地について何ら権利がありません。そのB(無権利者)から甲土地を購入したCも、甲土地について何ら権利がありません。

ですので、甲土地は、当然、Aのものになります。

これが、原則的な話です。(登記には公信力がない)

ただ、騙されたAにも、落ち度(不注意)があったといえます。

落ち度があったAが保護される(甲土地はAのもの)!

これでは、せっかく甲土地を購入したCがかわいそう!といえます。

そこで、

Cが善意無過失であれば、登記(対抗要件)を備えていなくても、

落ち度があったAよりも、Cを保護すべきとして、

甲土地は、Cのものになります。

これに対し、

Cが悪意又は有過失の場合には、Cを保護する必要はありませんので、

原則的な話に戻って、甲土地は、Aのものになります。

問題にチャレンジ

次の記述は、民法の規定等によれば、正しいですか?それとも、誤っていますか?

Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(本件売買契約という。)が締結された。AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない。

解答:誤り

詐欺による意思表示の取消しは、その取消し前に現れた善意無過失の第三者に対抗できません。

なお、対抗要件(登記)まで具備する必要はありません。

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