教材購入者専用ページ内にありますポイント解説(権利関係編)の一部を掲載しています。
理解を深めるためにも、ポイント解説等をご利用ください。
日常の家事に関する債務の連帯責任
民法761条本文において、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。」と規定されています。
この条文だけを見ますと、
連帯責任を負うだけ!のように見えますが、
この規定は、「夫婦はお互いに日常の家事(食費・教育費・家賃等生活に必要な費用)に関する法律行為につき他方を代理する権限をもっている」ということも規定しています。
つまり、夫(妻)が妻(夫)に代理権を与えていなくても、
日常家事に関する事項については、妻(夫)は夫(妻)を代理して法律行為をすることができます。
例えば、妻が、知り合いの店で野菜を購入したが、代金を支払っていません。後日、知り合いの店は、夫にその代金を請求することができます。
↓
繰り返しになりますが、
夫婦は、お互いに、日常家事に関する代理権をもっている!ということになります。
ここで、
日常家事に関する代理権(法定代理権)を基本代理権として表見代理(民法110条の権限外の行為の表見代理・復習まとめ集問4の表見代理のこと。)が成立するのかどうか?が問題となってきます。
権限外の行為の表見代理
例えば、
妻が、夫に無断で、夫名義の土地をAに売却したとします。
民法110条(権限外の行為の表見代理の規定)によれば、
代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるのであれば権限外の行為の表見代理が成立することになります。
仮に、
Aが善意無過失で、民法110条の規定により表見代理が成立すれば、
Aは、土地を取得することができますが、
逆に、
夫は、自分の土地を手放す必要があります。
こうなると、
夫自身の財産を妻が勝手に処分してもよい(逆も同じ)!ということになります。
これは、
夫婦の財産的独立をそこなうおそれがありますので、
日常家事代理権を基本代理権として民法上110条の表見代理が成立しないことになります。
つまり、Aは、土地を取得することができませんし、夫は、自分の土地を手放す必要はありません。
↓
しかし、相手方であるAのことを無視してはいけません。
そこで、
相手方(A)において越権行為が当該夫婦の日常家事の範囲内の法律行為であると信じるにつき正当理由がある!ということであれば、民法110条の趣旨が類推適用されることになります。
簡単に言いますと、
表見代理が成立し、相手方(A)が保護されることになります。
なお、
この具体例では、
土地を売却!となっていますが、
土地を売却する!という取引は、基本的に日常家事の範囲内の法律行為!とはなりませんので、表見代理が成立しないことになります。
繰り返しになりますが、
夫婦の一方が日常家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合、
表見代理は成立しません。
しかし、
相手方(第三者)において越権行為が当該夫婦の日常家事の範囲内の法律行為であると信じるにつき正当理由がある!ということであれば、民法110条の趣旨が類推適用されることになります。
問題にチャレンジ
次の記述は、民法の規定及び判例によれば、正しいですか?それとも、誤っていますか?
B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した。AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には、不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も、本件売買契約は有効である。
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解答:誤り
日常家事については、夫婦は、共に相手方の代理権を有することになります。
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夫婦の一方が、この代理権を越える法律行為を行ったとします。
この場合、民法110条(権限外の行為の表見代理の規定)の規定が適用されるのか?つまり、表見代理が成立するのか?が問題となってきます。
↓
基本的に、表見代理は成立しません。
しかし、相手方において当該法律行為が当該夫婦の日常家事の範囲内であると信じるにつき正当事由がある場合に限って、表見代理が成立することになります。
↓
本問では、
不動産売買ですので、日常家事の範囲内?ともなりますし、
「不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた」とも記載されていますので、表見代理は成立しません。
つまり、売買契約が有効となりません。
↓
上記の流れを覚えてください。
ざっくり説明しますと
例えば、日常家事に関する代理権を基本代理権として、表見代理が簡単に成立することになりますと、問題が生じます。
例えば、妻が夫の土地を売却する契約を相手方と締結したとします。この場合、表見代理が成立することになりますと、夫は、自分の土地を相手方に引き渡す必要があります。
夫も納得していれば問題ないのですが、納得していない場合も当然あります。
ですので、基本的に表見代理が成立しません。
しかし、相手方が、当該法律行為が当該夫婦の日常家事の範囲内であると信じるにつき正当事由があるのなら、相手方を保護する必要がありますので、表見代理が成立します。
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