制限行為能力者の種類
制限行為能力者は、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人に分類されます。
単独で有効に契約などの法律行為をなし得る能力のことを行為能力といいます。
未成年者
1.未成年者とは
未成年者とは、20歳未満の者のことです。
【補足】
- 婚姻できる年齢は、男が18歳・女が16歳です。
- 20歳未満で婚姻すると、成年に達したものとみなされます。つまり、制限行為能力者に該当しません。
- 未成年者が婚姻するときは、原則、父母の同意を得なければなりません。ただし、父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足ります。
- 18歳の男が結婚し、19歳に離婚したとします。離婚したからといって、19歳の男が制限行為能力者に戻ることはありません。
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2.未成年者が行う行為
【原 則】
法定代理人の同意を得ることなく、未成年者が単独で行った法律行為は、取り消すことができます。
【補足】
- 法定代理人とは、未成年者の親権者のことです。なお、その親権者がいないときは後見人のことをいいます。
- 法人であっても、法定代理人になることができます。
- 法律行為とは、例えば、土地建物の売買契約、賃貸借契約等のことです。
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【例 外】
未成年者が単独で行った一定の法律行為は、取り消すことができません。
【補足】
一定の法律行為とは、以下のものです。
- 単に権利を得又は義務を免れるべき行為
例えば、「負担のない贈与を受ける行為(贈与を拒む行為等は除かれています)」
- 法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができます。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、未成年者が自由に処分することができます。
「法定代理人から生活費をもらっていて、それ処分すること」などのことです。
- 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者として扱います。なお、許された営業の範囲外に関しては、成年者として扱いません。
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3.法定代理人の権利
未成年者の法定代理人には、取消権、代理権、同意権、追認権があります。
(1)取消権
未成年者が、単独で土地の売買契約を締結した場合、法定代理人がその売買契約を取り消すことができます。
(2)代理権
未成年者を代理して法定代理人が、土地の売買契約を締結することができます。この場合、その売買契約を取り消すことができません。
(3)同意権
未成年者が、法定代理人の同意を得て土地の売買契約を締結した場合、その売買契約を取り消すことができません。
(4)追認権
未成年者が、単独で土地の売買契約を締結した。その後、法定代理人が、その売買契約を追認すると、その売買契約を取り消すことができません。
【補足】
- 追認するということは、契約を取り消さないということです。
- 未成年者自身は、原則、追認をすることができません。ただし、成年に達した場合や法定代理人の同意を得た場合には、追認をすることができます。
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成年被後見人
1.成年被後見人とは
成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者のことをいいます。
【補足】
- 家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等の請求により後見開始の審判をすることができます。
- 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、成年後見人が付されます。
- 後見開始の審判とは、精神上の障害(認知症、知的障害など)によって判断能力を欠く常況にある者を保護していくための手続のことです。
- 後見開始の審判の取消しが行われた場合、成年被後見人に該当しなくなります。
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2.成年被後見人が行う行為
【原 則】
成年被後見人が単独で行った法律行為及び法定代理人の同意を得て行った法律行為は、取り消すことができます。
【補足】
- 法定代理人とは、成年後見人のことです。
- 法人であっても法定代理人になることができます。
- 成年後見人の同意を得て行った法律行為であっても、取り消すことができます。なぜなら、同意を与えたとしても、成年被後見人自身が、単独でその同意に従った適切な行為ができない可能性が高いためです。
- 成年後見人は、複数の者を選任することもできます。
- 成年後見人には、善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)があり、この義務を怠ると損害賠償責任を負うことになります。
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【例 外】
成年被後見人が単独で行った日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消すことができません。
3.法定代理人の権利
成年後見人には、取消権、代理権、追認権があります。
【補足】
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成年後見人には、同意権がありません。なぜなら、同意を与えたとしても、成年被後見人自身が、単独でその同意に従った適切な行為ができない可能性が高いためです。
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成年被後見人が居住している建物、その敷地について、成年後見人が、成年被後見人に代わって、売却や賃貸や賃貸借の解除や抵当権の設定等をする場合、家庭裁判所の許可が必要となります。
- 後見人と被後見人との利益が相反する行為については、後見人は、被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。しかし、後見監督人がいる場合には、その必要がありません。
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