留置権、先取特権、質権テキスト

留置権

留置権とは

留置権とは他人の物を留置することにより、相手方に弁済を間接的に促すための権利であり、法定担保物権です。法定担保物権とは、法律上の一定の要件を満たした場合に、自動的に発生する担保物権のことです。

【補足】

  1. 例えば、Aが自分の車の調子が悪かったので、Bに修理を依頼した。この場合、Bは、Aから修理代金が支払われるまでの間は、Aの車を渡さないというのが、留置権です。 要するに、Bは、Aの車を渡さないことによって、Aに対して間接的に修理代金の弁済を促すということになります。

  2. 留置権は、動産についても不動産についても成立します。

  3. 留置権は、相手方が弁済をするまで、目的物を占有し続けるので、目的物が、不動産の場合でも、登記が必要とはなりません。(=登記はできません

留置権の成立要件

他人の物を占有している者(不法行為によって占有を始めた者を除く)が、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済期が到来したのにもかかわらず、債権の弁済を受けない場合、弁済を受けるまで、その物を留置できます。

【補足】

  1. 他人の物とは、占有者以外の物であり、債務者の物に限定されていません。

    その物に関して生じた債権とは、物と債権において関係があるということです。物を返還しないことによって、相手方に対して、弁済が間接的に促される関係がある債権です。

  2. 他人の物を留置することにより、相手方に弁済を促すための権利であるので、債権自体の弁済期が到来していない場合には、相手方に弁済を促す必要もありません。簡単にいうと、4月10日に債権の弁済期なのに、4月1日に「物を引き渡して欲しかったら、お金を支払え」ということはないですよね。

  3. 不法行為によって占有を始めたとは、例えば、泥棒が盗んできた車を修繕して、その車の所有者に修繕代金を支払わないと車を引き渡さないようなことです。この場合、適法な占有ではないので、留置権は成立しません。

  4. では、占有開始時点では、適法な占有であったが、その後、無権限になった場合、例えば、建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除された後、占有する権原がないことを知りながら有益費を支出した場合、賃借人は、留置権を主張できません

【例題1】

Aの土地を借りてきた借地権者Bが、その土地上に建物を建築し、生活をしていた。その後、期間満了により土地の賃貸借契約が終了し、Bは、建物買取請求権を行使した場合、その行使により生じた代金債権を被担保債権として、建物及び土地について留置権を主張することができるのか。

【解答・考え方】

  1. Bが建物買取請求権を行使すると、Bがその建物の売主として、Aが買主として、Bはその建物の代金債権を取得します。その代金債権は、その建物に関して生じた債権、つまり、その物(=建物)に関して生じた債権に該当します。したがって、Bは、代金債権の弁済を受けるまで、建物について留置権を主張することができます。簡単にいうと、Bは、その建物の代金の弁済を受けるまでは、その建物で生活ができるということになります。
  2. 上記で、代金債権は、建物に関して生じた債権であるので、土地については、留置権を主張することができません。要するに、その土地をAに明け渡す必要が生じてきます。しかし、留置権により、その土地の上にある建物で生活することはできるが、その建物の下にある土地については、明け渡す必要があるというのは、おかしなことです。そこで、判例上、建物と一緒に土地についても留置権を主張できるとしています

【例題2】

Aの建物を借りてきた賃借人Bが、Bに対して造作買取請求権を有している場合、Bは、造作買取請求権により生じる代金債権を被担保債権として、建物について留置権を主張することができるのか。

【解答・考え方】

造作買取請求権により生じる代金債権は、造作(エアコン等)により生じる債権です。その代金債権は、その物(造作)に関して生じた債権であり、建物に関して生じた債権に該当することにはなりません。したがって、Bは、建物について留置権を主張することができません。

【例題3】

Aが所有している建物について、Bとの間で賃貸借契約を締結し、Bは、その建物で生活をしていた。その後、Bが、賃貸借契約期間中に、その建物に不可欠な修繕をした。その後、賃貸借契約が終了した場合、Bは、その修繕により生じた代金債権を被担保債権として、その建物について留置権を主張することができるのか。

【解答・考え方】

Bが、賃貸借契約期間中に修繕をした場合、Bは、留置権を主張することができます。要するに、Bは、修繕による代金の返済を受けるまでは、その建物で生活を続けることができます。ただし、留置権を行使して、建物で生活をしている間、Bは、賃料相当額を支払う必要があります。

【例題4】

Aが所有している建物をBに譲渡したが、登記をしていなかった。その後、Aが、Cとの間で売買契約を締結し、登記をした。この場合、A・C間の売買契約が有効となり、その建物はCのものになります。そして、Bは、Aに対して損害賠償請求権を有することになります。Bは、この損害賠償請求権を基に留置権を行使することができるのか。

【解答・考え方】

判例上、損害賠償請求権は、建物に関して生じた債権ではないので、Bは、留置権を行使することができません。そもそも留置権は、物を留置することにより、間接的に代金の弁済を促すものであり、この場合、Bが、損害賠償を受けるまで建物を明け渡さないとAに主張したところで、その建物の所有者は、Cとなっており、Aにとっては、何の効力も生じません。

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