営業保証金テキスト

営業保証金制度は、消費者保護の観点から、不動産取引の相手方が、万が一損失を受けた場合においても、その相手方に対して、その損失を弁済できるようにするための制度です。

相手方に損失を弁済できるようにするために、宅建業者が、あらかじめ、金銭や有価証券などの営業保証金を供託所に預け、その預けたものから、相手方に対して、弁済していきます。

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営業保証金の供託

1.営業保証金はどこに供託するのか

宅建業者は、営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。

【補足】

  1. 例えば、主たる事務所である本店と支店が3つある宅建業者の場合、本店分の営業保証金と支店3つ分の営業保証金を全部まとめて、主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。

  2. 供託所とは、法務局等のことです。

2.営業保証金を供託する額

主たる事務所については、1,000万円で、それ以外の事務所については、事務所1カ所ごとに500万円となります。

【補足】

  1. 例えば、主たる事務所である本店と支店が3つある宅建業者の場合、主たる事務所である本店については、1,000万円であり、3つの支店については、500万円(1カ所分)×3(3つの支店分)=1,500万円となります。そして、宅建業者は、それらの合計額2,500万円(1,000万円+1,500万円)を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。

  2. 事務所に該当しない案内所や出張所を設置しても、営業保証金を供託する必要はありません。

3.営業保証金は、どのような方法で供託するのか

  1. 金銭のみで供託していく方法
  2. 国債証券、地方債証券、政府保証債証券、その他の国土交通省令で定める有価証券のみで供託していく方法

    例えば、1,000万円を金銭のみで供託する場合、1,000万円のお金を支払えばいいのですが、有価証券については、有価証券の評価額で、供託すべき営業保証金の額を見ていくことになります。なお、評価額は、下記のとおりになります。

    ①国債証券⇒額面金額
    ②地方債証券、政府保証債証券⇒額面金額の90%
    ③一定の有価証券(手形、小切手、株券は除く)⇒額面金額の80%

    例えば、主たる事務所のみがある宅建業者の場合、宅建業者は、1,000万円の営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託します。国債証券のみで供託していく場合、額面金額1,000万円のものを供託する必要があります。

    また、地方債証券のみで供託する場合、額面金額1,000万円のものを供託しても上記2の規定に違反することになります。

    なぜなら、地方債証券の評価額は、900万円(1,000万円の90%)となり、100万円が不足するからです。また、その他の国土交通省令で定める有価証券のみで供託する場合にも、額面金額1,000万円のものを供託しても上記2の規定に違反することになります。

    その他の国土交通省令で定める有価証券の評価額は、800万円(1,000万円の80%)となり、200万円が不足します。

  3. 金銭と有価証券をあわせて供託していく方法

    例えば、主たる事務所のみがある宅建業者の場合、宅建業者は、1,000万円の営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託します。

    この場合、例えば、金銭500万円と額面金額500万円の国債証券を供託することができます。

    また、金銭100万円と額面金額1,000万円の地方債証券を供託することができます。

    また、200万円の金銭と額面金額1,000万円のその他の有価証券を供託することもできます。

4.営業保証金はいつ供託するのか

  • 宅建業者は、営業保証金を供託したときは、営業保証金を供託した旨の届出をその免許権者(免許を与えた都道府県知事又は国土交通大臣)にしなければなりません。その届出をした後でなければ、宅建業者は、事業を開始することができません。

【補足】

  1. 免許権者から免許を与えられた宅建業者は、営業保証金を供託し、免許権者に営業保証金を供託した旨の届出をして、その後に、事業を開始していきます。

  2. 届出の前に事業を開始した場合、罰則等の適用を受けることになります。なお、詳しくは、罰則のテキストを参照してください。また、保証協会に加入した宅建業者は、営業保証金を供託する必要はありません。詳しくは、保証協会のテキストを参照してください。

  • 免許権者は、免許を与えた日から3カ月以内に宅建業者が営業保証金を供託した旨の届出をしないときは、その届出をすべき旨の催告をしなければなりません。
    また、宅建業者がその催告を受けた日から1カ月以内に宅建業者がその届出をしないときは、免許権者は、その届出をしない宅建業者の免許を取り消すことができます。

【補足】

免許権者から免許を与えられた宅建業者が、免許を与えられてから3カ月以内に営業保証金を供託した旨の届出をしない場合、免許権者から「届出をしてくれ」と催告されます。そして、「届出をしてくれ」と催告されてから1カ月以内に届出をしなかった場合、免許を取り消される可能性があります。

  • 事業を開始した宅建業者が、新たに、事務所を設置した場合、その設置した事務所分に相当する営業保証金を供託し、供託した旨の届出を免許権者にしたでなければ、その事務所で事業を開始することができません。

【補足】

例えば、甲県知事の免許を受けている宅建業者が、事業を開始している。その後、宅建業者が、2つの支店を設置した場合、宅建業者は、1,000万円(500万円×2)の営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、供託した旨を甲県知事に届出をした後でなければ、その支店で事業を行うことはできません。

営業保証金の還付

営業保証金の還付とは、宅建業者と宅建業に関し取引をすることにより損害を被った者が、営業保証金から弁済を受けることです。

1.営業保証金の還付を受けることができる者

宅建業者と宅建業に関し取引をした者(宅建業者を除きます。)が、還付を受けることができます。

2.営業保証金の還付を受けることができる債権

宅建業者と宅建業に関し取引をしたことによって生じた債権を有する者(宅建業者を除きます)が、還付を受けることができます。

【補足】

  1. 宅建業者と宅建業に関し取引をした者は、その取引により生じた債権に関し、還付を受けることができます。ただし、宅建業者Aと宅建業に関し取引をした者が、宅建業者Bであれば、Bは、還付を受けることができません。
  2. 宅建業者に対して債権を有していても、その債権が、宅建業に関し取引をしたことによって生じた債権以外である場合は、還付を受けることができません。例えば、宅建業者に対して、工事代金債権を有している者や、宅建業者に対して、広告代金債権を有している者は、還付を受けることができません。また、宅建業者に対して、宅建業に従事したことによる給料債権を有する従業員も、還付を受けることができません。

3.営業保証金から還付を受けることができる金額

宅建業者が、供託した営業保証金の範囲内で、還付を受けることができます。

【補足】

  1. 例えば、主たる事務所のみを有する宅建業者は、1,000万円の営業保証金を供託していたとします。その後、宅建業者と宅建業に関する取引をすることにより3,000万円の損害を被った者がいるとします。損害を被った者は、営業保証金から1,000万円の弁済を受けることができます。なお、不足している2,000万円については、営業保証金から還付を受けることができず、宅建業者が有している財産から弁済を受けていくことになります。

  2. 例えば、主たる事務所と3つの従たる事務所を有する宅建業者は、2,500万円の営業保証金を供託していたとします。その後、宅建業者と宅建業に関する取引をすることにより2,000万円の損害を被った者がいるとします。損害を被った者は、営業保証金から2,000万円の弁済を受けることができます。

4.営業保証金から還付を受けるためには

営業保証金の還付請求は、供託物払渡請求書及び一定の通知書を、直接、供託所に提出する必要があります。

5.営業保証金の不足額の供託(補充供託)

宅建業者は、営業保証金が還付されたために、免許権者から不足額を供託すべき旨の通知書の送付を受けたときには、その通知書の受領日から2週間以内にその不足額を供託する必要があります。

なお、宅建業者は、その供託をした日から2週間以内に供託した旨を、免許権者に届け出る必要があります。

【補足】

例えば、主たる事務所のみを有する宅建業者は、1,000万円の営業保証金を供託していていたとします。その後、300万円の営業保証金が還付された場合、300万円が不足することになります。

その後、免許権者から不足額を供託すべき旨の通知書を受けた宅建業者は、その通知書の交付を受けた日から2週間以内に不足額を供託する必要があります。

また、供託した宅建業者は、その供託日から2週間以内に、その旨を免許権者に届け出る必要があります。

営業保証金の取戻し

営業保証金の取戻しとは、営業保証金を供託した宅建業者が、一定の場合、供託していた営業保証金を返してもらうことです。

1.営業保証金を取り戻すことができる一定の場合とは

  1. 免許の更新をするための手続をすることなく、免許の有効期間が満了したとき
  2. 破産手続開始決定、解散、廃業等の届出により免許が失効したとき
  3. 個人である宅建業者が死亡したときや、法人である宅建業者が合併により消滅したとき
  4. 宅建業者が免許取消処分を受けたとき
  5. 宅建業者が、一部の事務所を廃止したことにより、宅建業者が供託している営業保証金について、超過額が発生したとき

    例えば、主たる事務所と1つの従たる事務所を有する宅建業者は、1,500万円の営業保証金を供託していたとします。
    その後、宅建業者が、従たる事務所を廃止した場合、本来なら1,000万円を供託すればよく、500万円の超過額が発生します。その超過額の500万円は取り戻すことができます。

  6. 宅建業者が、有価証券のみで、又は有価証券とともに金銭で供託している場合で、主たる事務所が移転して、最寄りの供託所が変わり、新たに営業保証金を供託するとき
  7. 営業保証金を供託している宅建業者が、保証協会の社員となることによって、営業保証金を供託する必要がなくなったとき

2.営業保証金を取り戻すための方法

  1. 上記「1.営業保証金を取り戻すことができる一定の場合」のa~eに該当した場合、宅建業者は、原則、還付請求権者に対して、6カ月を下回らない一定期間内(6カ月以上の一定期間内)に申し出るべき旨を公告します。そして、その期間内に還付請求権者からの申出がなかった場合に、営業保証金を取り戻すことができます。
  2. 上記「1.営業保証金を取り戻すことができる一定の場合」のfとgに該当した場合や取戻し事由発生後10年を経過した場合、宅建業者は、取戻しのための公告手続をすることなく、直ちに、営業保証金を取り戻すことができます。

【補足】

  1. 上記1のa~eに該当したからといって、直ぐに、営業保証金を取り戻すことができるのなら、営業保証金から還付を受けることができる者を保護することができなくなります。よって、営業保証金を取り戻すためには、原則、6カ月以上の期間を定めて、「還付の申出をして下さい」という旨の公告をしなければなりません。

    そして、その期間内に、申出がなかった場合には、取り戻すことができます。

    公告をしたときは、宅建業者は、遅滞なく、その旨を免許権者に届け出る必要があります

  2. 上記1のfとgに該当しても、営業保証金から還付を受けることができる者は、保護されます。なぜなら、上記1のfの場合は、営業保証金を供託する供託所が変わるだけであり、gの場合は、営業保証金から還付を受けることができなくても、保証協会から弁済を受けることができるからです。

    取戻し事由発生後10年を経過したときにも、公告手続をすることなく、直ぐに、営業保証金を取り戻すことができます。なぜなら、債権の消滅時効は、原則、10年であるからです。

営業保証金の保管替え等

営業保証金は、主たる事務所の最寄りの供託所に供託しますが、主たる事務所を移転することにより、主たる事務所の最寄りの供託所が変わった場合、新しい供託所に営業保証金を供託しなければなりません

1.金銭のみで営業保証金を供託している場合

金銭のみで営業保証金を供託している宅建業者は、遅滞なく、移転する前に営業保証金を供託している供託所に、費用を予納して、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への保管替えを請求しなければなりません

【補足】

金銭のみで営業保証金を供託している宅建業者が、主たる事務所を移転したことにより、主たる事務所の最寄りの供託所が変わった場合、従前の供託所(営業保証金を供託している供託所)に対して、あらかじめ、費用を予納し、「営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に移転して下さい。」と請求します。

この請求を保管替え請求といい、従前の供託所に請求します。

2.有価証券のみ又は金銭と有価証券をあわせて営業保証金を供託している場合

有価証券のみ又は金銭と有価証券をあわせて営業保証金を供託している宅建業者は、遅滞なく、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に、新たに営業保証金を供託しなければなりません

宅建業者が、新たに供託した場合、移転前の供託所にも営業保証金を供託しているので、一時的に、二重に供託していることになります。

そこで、宅建業者は、公告手続をすることなく、直ちに、移転前に供託していた営業保証金を取り戻すことができます。

【補足】

有価証券のみ又は金銭と有価証券をあわせて営業保証金を供託している場合は、保管替えの請求をしていくのではなく、宅建業者が、新たに、移転後の供託所に営業保証金を供託します。

そうすると、宅建業者は、移転前の供託所と移転後の供託所に営業保証金を供託していることになります。

そこで、宅建業者は、移転前の供託所に供託している営業保証金を公告手続をすることなく、直ちに、取り戻すことができます。

営業保証金の変換

営業保証金の供託は、金銭のみ、有価証券のみ、金銭と有価証券をあわせてする方法があります。

例えば、金銭のみの方法から、有価証券のみの方法等に変えたり、有価証券のみの方法から、金銭と有価証券をあわせてする方法等に変えたりすることを営業保証金の変換といいます。

宅建業者は、営業保証金の変換のため、新たに供託したときは、遅滞なく、その旨を、供託書正本の写しを添付して、免許権者に届け出なければなりません

【補足】

例えば、額面金額1,000万円の国債証券を営業保証金として供託している宅建業者が、新たに、額面金額1,000万円の地方債証券を供託したとしても、営業保証金の変換をすることができません。

なぜなら、地方債証券の評価額は、額面金額の90%なので、900万円となり、100万円が不足するからです。

テキストを読み終えた後は、穴埋め問題を解きましょう。

また、穴埋め問題を解き終えた後は、一問一答を解きましょう。

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